読書マラソン『アメリカ外交の大戦略―先制・単独行動・覇権』(kobayashi)

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著者

本書は、冷戦史研究の大家として知られるジョン・ルイス・ギャデイスイェール大学教授によるもので、9・11以降のアメリカの外交・安全保障政策を支える戦略を、19世紀初めにジョン・クインシー・アダムズが生み出した先制、単独行動主義、覇権という3つの概念を手掛かりにアメリカ外交史の中に位置付け、その意義を探っている。

ギャデイスは、このような作業を通して、ブッシュの示した国家安全保障戦略を戦略としては高く評価しつつも、実際に成功するかどうかは別だとして、アダム・スミスやアレクサンダー・ハミルトンの議論を引き合いに出しながら、多国間主義的な考えを基礎にすべきであると主張する。

9・11テロがアメリカの国土安全保障に与えた影響が大変に大きなものであった。アメリカは如何にこの新しい事態に対応していくのか。

本書の末章からは、その苦悩や独善を世界の国が共有出来得る希望に変換し、同意を集めることが出来るようにアメリカが行動すべきである、との著者の強い思いが伝わってきた。

連続した講演をまとめたものということもあり分量も多くなくコンパクトであるし、歴史的に思考する作業というのは知的刺激に満ちている。

しかしながら、そのような楽しい作業も、訳者の訳出の稚拙さによりちょっぴり阻害されてしまったことが唯一残念な点である。