読書マラソン『佐々木卓也『アイゼンハワー政権の封じ込め政策-ソ連の脅威、ミサイル・ギャ』(kobayashi)

【キーワード;冷戦、1950sのアメリカ外交、アイゼンハワー、封じ込め】

オススメ度;★★★☆☆(アメリカ外交をやりたい人は+0.5)

表題の通り、アイゼンハワー政権の対ソ封じ込め政策の経緯とその意義を検討したもの。

大量報復戦略という核戦力による抑止を中心とした政策をとるアイゼンハワーの考えは、健全な財政の維持と恒常的な軍事費の拡大によりアメリカの自由と民主主義が失われることへの憂慮の二点が根底にあり、この点は終始一貫していた。

また一方で文化・技術交流を封じ込め政策の一つとして積極的に活用使用としたことは見逃せないし、興味深いところである。

しかしこういった政策は現状のソ連の脅威を誤って評価したものであるとし、核戦力だけでなく通常戦力を含めた幅広い防衛力拡充を求める論者からは強く批判された。

結局、徒な軍事費拡大やソ連脅威論を退けるアイゼンハワーの透徹したリアリズムは(いくらかの不運のせいもあるが)世論には的確には理解されず、有名な退任演説を残し、彼は公職から去ることになる。

今から考えると彼の路線自体は間違ってはいなかったのだろうが、それを国民に理解させるための説得に失敗したといえるだろう。アメリカの統治構造を考えるとそれはまさに大統領に求められるものである。

また自由と民主主義に大きく関わる人権問題にしてもアイゼンハワーは配慮や知識に欠けていた。これは体制間のイデオロギー競争にマイナスの影響を与え、野党民主党につけこまれる余地を与えた。

通読して、50s代の封じ込め政策の挫折の一因はアイゼンハワー個人の能力の限界を現したものであり、また外交・安全保障政策を世論に効果的に説明する難しさによるものであることを痛感させられた。